お客様からいただく相談のひとつに、「リラクゼーションはその時は気持ち良いけれど、もみ返しがくる」というお声があります。
『しっかりめに施術して欲しいので、強さ加減の好みを聞かれた際に「強めに」とお願いしているからだと思いますが…』と、あるお客様は仰られました。私がお話を伺った範疇ですが、「もみ返し」があっても、サロン側にお伝えしないお客様が少なくありません、
ということは、セラピスト側は自分がもみ返しを起こすような施術をしている、と気づいていないことも…。
もみ返しとは?
施術を受けた後に、筋肉痛のように特定の部位に痛みがでたり、押されたところが重だるい、首が回らなくなってしまったなどの症状が出た場合、もみ返しの症状かもしれません。これは、以下の原因が考えられます。
・お客さまに合わない力加減で施術をする
・手の力でグイグイと筋肉を押しんだり、揉む
・セラピストが無理な姿勢で施術をしている
上記により、お客さまの筋膜や筋線維を断裂させ、炎症を起こし、症状がひどいと内出血を起こしたり、その部位が引き攣れのような症状を起こす場合もあります。つまり怪我をさせてしまった状態がもみ返しなのです。
痛みがあるのが効果的だと考えるお客様やセラピストも正直おられます。昔、足のリンパマッサージを受けた際、施術後にできた無数のアザを一緒に見ながら、「自然治癒力を利用してさらに健康になる」と言われたことがあります涙。セラピストなりたての頃で、内心「??」と思いながらも、そんなものかなぁと。
断言されると、そんな気になりますが…笑、いやいや、痛みは体にとって危険を知らせる信号です。そのため、痛みを感じると、体が縮こまって緊張し、その状態にグイグイと圧をかけられることで、さらに、もみ返しが悪化することもあるのです。
好転反応との違いは?
施術を受けると、すっきりする!場合もあれば、その時の体の状態によっては、施樹後にかえってグッタリするようなこともあります。もみ返しとの違いは、肩周りだけ、足だけといった部分的な痛みやだるさが出た時や、痛みが3日以上続く場合はもみ返しの可能性があります。
好転反応とは、体が正常な状態に戻ろうとする【一時的な】反応なのですね。お仕事や家事育児が忙しく、疲労が続いている時や、長くストレスを抱えている時は、体が緊張状態になっています。
リラクゼーションの施術を受けることで全身が緩み、血流が促進効果が期待できますが、それにより体内の毒素を排泄しようと吐き気や下痢、頭痛、強い眠気などを起こすことがあります。時には血流促進によりじんましんが出る場合もあります。
しかし、数日で症状が収まり、逆に快適な状態になっていくことを、好転反応といいます。
もみ返しがあってもまた受けたい
前述しましたが、強い刺激が身体に効いている、として、もみ返しはくるけど、そのサロンで施術を受け続ける、というお客様もおられます。理由は立地や予算以外にもセラピストさんの人柄が好き、と言った理由も多いようです。
しかし、体は、とても健気なもので、もみ返しによって筋繊維が損傷すると、その部位をもっと守らなきゃ!と線維を厚くし、その結果、神経が鈍くなってしまうというケースも。
その結果、力加減をもっと強くしてほしい!と、どんどん希望がエスカレートしていき、さらに筋緊張が高まり、疲労感がいつまでも抜けなくなったり、逆に普段の痛みの原因になってしまう…こともあるそうです。
お客様は痛くしてほしいわけではない
なぜ、お客様は強さを求めるのでしょうか。
普段の生活の中で過度な緊張から神経が鈍くなり、圧を感じにくくなっている、ということもあるかもしれません。いずれにしても、お客さまが「もっと圧を強くしてください」の言葉には、「痛みを与えてくれ」という意味ではなく、「自分を感じさせて欲しい」という想いがあるのでは無いでしょうか。
私にとって忘れられないお客さまのひとりに、「もみ返しが来てもいいから、とにかく強くして欲しい」という女性がいました。20代のとても華奢な方です。私も未熟なセラピストだったこともあり、言われたままに全体重をかけ、手の力、前腕を使ってグイグイと施術したのを覚えています。力加減を伺うと、「もっと強くしてもいい」と希望され、必死に施術しました。
お客様は、すっきりした、とお帰りになられましたが、その後、もみ返しのクレームは入らないだろうか…と不安だったのを覚えています。
実はその方の指にはいわゆる吐きダコがありました。あの時は、とにかくご要望にお答えしなきゃとということばかりでしたが、今思うと、刺激を強く受けることで「私」を感じたいという、その方なりの内なる声だったのかな…と思います。
肌から受ける感覚は心理面とも深くつながっています。実はメンタルの問題が隠れていることもあるため、注意が必要です。定期的に学ばせていただいている心理学勉強会でも、このテーマを取り上げていただいたので、いずれシェアさせていただきますね。
もみ返しを感じない私だった
私の体験になりますが、2002年頃にある企業で、オイルトリートメントを主体としたサロンスタッフの育成トレーナーとして働いていました。
全国に続々オープンするサロンのスタッフを短期間でプロに仕上げていくので、朝から晩まで練習練習、トレーナーは、スタッフ候補生の施術を一日中、自分の体で受けてチェックするという、なかなかにハードなお仕事でした。
同僚のトレーナーは、研修期間中、結構なもみ返しに苦しんでいましたが、私は全くといってよいほど、もみ返しを感じることがなく、「じゃあ、私が今日はチェック担当しますね〜」なんて言ってました。それを数年続けたのち、独立してからも、「受けて育てる」スタイルのスクールを運営しています。
ですが、長年、感覚を探求し、心理学の勉強をするうちに、自分が幼少期から常に緊張状態にあり、かなり感覚神経が鈍麻していることに気付きました。(レッスンでもよく言いますが、セラピストになるまで本当に苦労しました)
それから、不思議ともみ返しも感じるようになったのですね。現在、レッスンでは、スタンスが安定してくるまでは、圧を無理に入れないようにし、(逆に、初期に圧を無理にいれようとすると、スタンスが身につかない)、生徒様からもみ返しを受けることは無いのですが…
しかし、長年の蓄積からか、2021年の秋頃から1年間、原因不明の全身の痛みが。とにかく今までが過緊張だったのでしょう。更年期でホルモンバランスの乱れとともに、痛みを緩和するエストロゲンやセロトニンが減少したのも理由のひとつかもしれません。
気持ちも沈みそうになりましたが、自分の体で学んでなんぼ!のセラピストなので、痛みを観察したり、毎朝のヨガが習慣化したり、経絡指圧を定期的に受けに行くなど、たくさんの気づきもありました。
おかげさまで、今は全く痛みは無くなり、逆に良い運動習慣が身につきラッキーでした笑。こんなこともあり、現在、長期スクールの新規受付は休止していますが、単発講座を続けながら、タイミングを見て再開したいと思います。
自身の経験から「強さを求めている時」の身体は、その人を一生懸命に固い鎧で守ってくれている。だから、グイグイと圧をかけて、その鎧を壊そうとしたり、こじ開けるのではなく、「大丈夫ですよ」「今は安心してゆっくりしてくださいね」と柔らかくも深い圧でゆっくり溶け合っていくイメージの施術がしたいなと思うのです。
痛いのと深いのは違う
しかし、強くないと納得いただけないお客様もいます。ただ、私のように将来的に体に負担が出てしまうこともあるかもしれません。
説き伏せるわけではありませんが、ここで、「痛みのある圧」と「痛みはないけど深い圧」の違いを、施術の際、体感していただくことがあります。しかし、お客様が良いと信じていることなので、押し付けないよう、無理強いしないよう、説明するよう心がけています。
この圧の使い分けは「感覚を育てる技術講座」でお伝えしています。
いずれにしても、お客さまのリクエストに応えよう!と一生懸命に施術しているのに、実はお客様を怪我させていた…というケースになりかねない圧の加減。かつての私もそうだったかもしれません。
じゃあ、圧を入れなければいいじゃないか、ということではないのです。人は心地よさ、気持ちよさを感じるには「ある程度」の圧の重みが必要だとされています。
昔、子供の頃、お布団が綿毛布でずっしりと重みがありました。でも不思議と安心したものです。羽毛布団世代はご存じないかもです…苦笑。ですが、そんな心理的な効果を狙って「ウエイトブランケット」なんていう重さ5〜7キロほどある布団も販売されてるくらいです。
私が探求しているジャパニーズオイルセラピーAtsuは、痛みなく、骨まで届く深く柔らかい圧で、心理面での安心効果も狙っています。
セラピストさんの多くが、常にお客様を想い、一生懸命頑張る方ばかり。だからこそ、その想いを安全に、安心して手から伝えられるようにと願って、スタンス理論講座を開設しました。
スタンスを整えることで、痛みなく深い圧は誰でも身につけることができるのです。
最後に
私のセラピストとしての目標として、半端じゃない密着感!と思ってもらえるオイルトリートメントを極めていくことです。
とけあいを感じられることが、体の鎧を少しずつ剥がしていけるかなと。普段、一生懸命、いろいろなものと戦い、挑戦している方が本当に多いので、鎧を捨てて欲しいとは思っていません。
ただ、サロンでは、その鎧を一旦、置いておいていただけるような存在、空間になりたいな、と切に願っています。
次回のブログは
「気づかずに手力になっているかもしれない…そのスタンス」がテーマ予定です。
東京・新富八丁堀 Atsuリラクセーションサロン「而今(にこん)」のHPはこちら